おとといの朝、小鳥が書き掛けの手紙を咥えて飛んでいってしまいました。出す宛のないラブレターだったのに、まさか君から返事を貰えるなんて。
君と過ごしたのも、朝でしたね。朝焼けが眩しくて、本当のところ顔をよく覚えていません。長い髪が綺麗だったことと、歌がうまかったことは、覚えています。
次の朝から、小鳥が毎朝来るようになりました。窓を開けると部屋に入ってきて、僕の頭や肩や手をちょんちょんと嘴で突きます。「もう一度、人の姿になってもいいんだよ」と囁くと、小鳥は囀りをやめて、僕をじっと見つめました。
この手紙も小鳥に託します。小鳥は今、便箋を覗きこんでいるから、もう君にも伝わっていますね、きっと。ほら、小鳥が驚いたような表情で僕を見つめています。
2015年2月17日火曜日
2015年2月10日火曜日
二月十日 植木鉢だらけの家
家中のベランダに植木鉢を吊るした家について考えている。
「あの植木鉢には何が植えてあるんだろう?」
ウサギが答える。「チューリップに決まってる」
どうして決まってるのかわからないけれど、たぶんチューリップだ。
「あの植木鉢には何が植えてあるんだろう?」
ウサギが答える。「チューリップに決まってる」
どうして決まってるのかわからないけれど、たぶんチューリップだ。
2015年2月9日月曜日
とりかへばや
赤いマニキュアは、大人の女になれたら塗ろうと決めていたのに、いつまで経っても「大人の女」にはなれないまま、年齢ばかり重ねていった。
あなたの節くれだった大きな指の先が、赤く艶やかに彩られていたのを見て、私がどんなにショックだったか、あなたにはわからないでしょう?
どうして私を差し置いて、赤いマニキュアを塗ったの? どうして? どうして?
自分の身体を這う赤い十の爪を、ぼんやりと眺めることしかできなかった。声も出なかったし、潤いもしなかった。私は無言で服を着て、あなたを置いて帰った。
帰り道、私は赤いマニキュアを買った。そのデパートで一番高価な赤いマニキュアを買った。理想の赤。理想の艶。ほら、やっぱり、私の小さく細い指のほうが、ずっと赤い爪にふさわしい。
真っ赤な指先で己の身体を撫でる時、漏れる吐息は、あなたの低い声によく似ている。
あなたの節くれだった大きな指の先が、赤く艶やかに彩られていたのを見て、私がどんなにショックだったか、あなたにはわからないでしょう?
どうして私を差し置いて、赤いマニキュアを塗ったの? どうして? どうして?
自分の身体を這う赤い十の爪を、ぼんやりと眺めることしかできなかった。声も出なかったし、潤いもしなかった。私は無言で服を着て、あなたを置いて帰った。
帰り道、私は赤いマニキュアを買った。そのデパートで一番高価な赤いマニキュアを買った。理想の赤。理想の艶。ほら、やっぱり、私の小さく細い指のほうが、ずっと赤い爪にふさわしい。
真っ赤な指先で己の身体を撫でる時、漏れる吐息は、あなたの低い声によく似ている。
2015年2月1日日曜日
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