懸恋-keren-
超短編
2014年8月30日土曜日
朝霧 (お題:霧)
目覚めると、寝室は濃い霧で満ちていた。
確かに目覚めたはずなのに、まだ夢の中にいるのかと、激しく混乱する。
視界が悪くて、手元に手繰り寄せた目覚まし時計の針もよく見えない。本当に朝なのか。
体のあちこちを触り、乱れた布団を探る。湿気を吸って重たい。
窓のほうへ這って行き、よろよろと立ち上がり、カーテンを開ける。
カーテンも重く、心なしか開きが悪い。
窓の外は、快晴だった。
眩しい。
思い切って窓を開けると、霧が一斉に音を立てて外気に吸い取られていった。
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