懸恋-keren-
超短編
2012年12月9日日曜日
その掌には
舞踊家は、輝く珠を手に持ち踊る。
手を返しても、高く上げても、珠は落ちない。
珠は時に艶やかに輝き、時に軽妙に弾む。
ある時、ポトンと珠が手から離れ、落ちた。
舞踊家にとって、生まれて初めての出来事だった。
珠は人々には決して見えないものだったが、観客は皆、息を飲んだ。
珠は、そのままどこかに転がっていってしまった。
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