「焼き団子の雲は、歩き心地がいいんだよ」
と、「二度死んだ男」を名乗る人は言った。
「へえ。天国ってのは、お団子なんですね。食べられるんですか」
「ああ、もちろん。香ばしい香りがしているからね。ちぎって食べるんだ。うまいぞー」
その人は、そういうとズズズと安い焼酎を啜った。
「地獄ってのは、ほら、アレだ。マキロン。あのへんな、ピンクとかミドリとか、丸いやつ」
「マカロンですか?」
「そう、それそれ。あれは、歩けねえ。地獄とはよく言ったもんだねー。足がズザッズザッとはまっちまって。なかなか抜けねえ。雪を歩くより難儀イな」
「マカロンは食べましたか?」
「甘ったるくて、よくわかんなかった。ありゃ、へんな食い物だね」
私は翌日、デパートの地下でマカロンをたくさん買った。地獄に堕ちて、マカロンに埋もれるのも、悪くないと思うのだけど。