懸恋-keren-
超短編
2012年10月1日月曜日
十六夜
「台風一過の十六夜は、あまりに眩しいので、サングラスならぬムーングラスが必要なのだ」
男は、もっともらしいことを言う。
ムーングラスとやらは、まん丸いメガネで色はついていない。
「いい声ですね」
すると、男はポケットから愛おしそうに鈴虫を出して見せた。
鈴虫が鳴くと、ムーングラスはすこし歪むらしい。ムーングラスが歪むと、男の目が潤んでいるようにも見えた。
十六夜の月に似ていると思った。
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