懸恋-keren-
超短編
2012年10月11日木曜日
人形を返却した話
図書館へ向かう道は、いつもと同じはずだった。植え込みの上で倒れている人形を見るまでは。
人形は薄汚れ、瞼は閉じるでもなく、薄目を開けて空を見ていた。私はその人形を避けるように歩いた。
図書館に着くと、職員たちが全員、薄目を開けたような顔をしていた。あの人形そっくりだった。
私は人形の元に戻り、抱きかかえて図書館に行った。
人形を職員に渡すと、彼は愛おしそうに人形を撫でた。
そして人形は童話に、職員たちの顔にも生気が戻った。
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