ある朝、まだ着替えないうちに、クマ氏がやってきた。
「お連れします」
と言う。どこへ? こんな格好のままでよいのかしら? お財布は? 鍵は? 歯も磨いていないのよ?
色々と質問が湧いてきたけれど、クマ氏は私に背中を向けて屈んだ。
私は仕方なく、クマ氏の背中にしがみついた。
よれよれの赤いチェックのパジャマのままクマにおんぶされる。
クマの背中は広かった。
「私をどこに連れてゆくの?」
答えを聞く前に、私は眠ってしまった。
あんまりクマ氏の背中が頼もしいから、どこに連れて行かれてもいいような気がしている。