鳥は、少年にずいぶんかわいがられていた。少年は貧しかったが、自分の食事を抜いても鳥の餌代は惜しまなかった。
鳥は丸々と太り、飛べなくなった。一晩中、窓から通りを眺め、よく聞こえる耳で人々のお喋りを聞いた。
朝、少年が帰ってくると、鳥は今日聞いた話を少年にそっくり聞かせた。
鳥の話には、たくさんの登場人物がいた。酔っ払い、チンピラ、老人、ぺてん師、そして娼婦。
少年は、娼婦に恋をしていた。姿を見たことはない。鳥が真似する声で、少年は覚えたての自慰をする。
それが済むと「もうそんな仕事はやめにしなよ」と、太った鳥に語り掛ける。
太った鳥は、毎晩、窓から「もうそんな仕事はやめにしなよ」と少年の声で、娼婦に繰り返し語り掛ける。
幼い娼婦は、声が聞こえたような気がして窓を見上げるが、いつだってまんまるの羽根の塊がぼんやり見えるだけ――