蛙は合唱が得意なのはご存知の通りだが、上手い蛙も下手な蛙もいるし、実はコンサートマスターだっている。
一番声のよい蛙が月に向かって一声出せば、それに合わせて一斉に合唱が始まる。
レパートリーは幅広いから、蛙たちにもそれが幾つあるのかわかっていない。
もっともほとんどの場合、一曲は一回しか歌われることがない。
ところがコンサートマスターの蛙は、とある月夜に歌った歌がえらく気に入ってしまった。
名曲の力か、たまたま記憶力がよい晩だったのかはわからないが、三日も繰り返して歌った。
それに気がついたのが近所に住むピアノの得意な少年。
聞き取り、音を拾って、楽譜にした。
少年は、蛙世界の名曲を後世に残さんがため、オタマジャクシを集め、その歌を指導している。