2009年12月19日土曜日

楽園のアンテナ

猫の尻尾を丹念に探ると、小さな硬いものに触れる。
ちょっとゴメンヨ、と言ってやわらかな毛を掻き分け、ポケットに忍ばせたナイフを取り出して、チョンチョンのスッと切ると、小さな透明な棒が出てくる。血は出ない。
陽の光に当てると、虹よりも派手な虹色が広がった。
僕はそれを「楽園のアンテナ」と呼んだ。
楽園のアンテナの標本は、やっと9本集まった。
これを持って外を歩けば、温かいお昼寝に適した場所とか、満月がよく見える場所とか、おいしい魚屋の場所とか、怠け者のネズミが棲んでいる家とか、ミルクをくれるおばあさんちとか、なんでもよくわかる。
アンテナを失った猫たちの心配はいらない。あいつらにとって楽園のアンテナはオマケみたいなもので、楽園のことはちゃんとヒゲが覚えているから。
今日は、ノラ猫のサスケのアンテナを首にぶら下げて、散歩に出かけよう。