2009年12月1日火曜日

鳴らない

ここに、クラリネットが二台ある。
きみは、昔、ブラスバンドをやっていたから、クラリネットをドレミファソくらいまでなら、吹くことができるはずだ。
さあ、吹いてごらん。
おや、鳴らないって? そりゃあ、そうさ。
ひとつはマウスピースにキツツキが穴を開けたから音が出ない。
もうひとつは、山の枯葉に14年間埋もれて腐ってしまったから音が出ない。
だけれど、キツツキのほうは「スー」と鳴らないし、腐っちまったほうは「フー」と鳴らないだろう。
どっちが好きかい?
どっちも嫌い? 鳴らない楽器は楽器じゃないって?
さぁて、それはどうかな。同じ鳴らないクラリネットでも、腐ったやつがよいと思うよ。悠久の時の流れを感じるからね。
大袈裟だって? 私はいつだって大袈裟だ。