2006年2月8日水曜日

甘い硬貨

「……もっと甘いのが欲しかったのよ?」
グラスを置きながら彼を睨むと、指先からコインが出てきた。
突然の手品に思わず見とれる。
彼は、それをグラスに勢いよくぶつけた。けたたましい音がすると思いきや、「チュッ」と口づける音がする。
一口呑むと、注文通り甘くなっていた。

《Tenor Saxophone》