懸恋-keren-
超短編
2006年2月3日金曜日
プレリュード
森の奥に小さな湖がある。冬になると湖は間違いなく凍る。
彼はたぶん十一才だ。十才にしては大人びているし、12才にしては華奢だから。
彼は、凍った湖の上に薪を組んで火をつけた。
湖の真ん中で炎が揺れている。
彼は凍った水面にどっかり腰を下ろして、炎を見ていた。時々薪を足して、うまく火を育てている。
暗くなっても炎が消えることはなかった。私の家の窓から木々の隙間から湖が見えるのだ。
私は眠った思いの外よく眠れた。
朝、湖には炎はもちろん、少年も薪の燃え残りもなく、凍っている。
《Flute》
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