懸恋-keren-
超短編
2004年11月30日火曜日
柿
私の部屋の障子越しに柿の木が見える。白い障子に映るその姿は墨絵のようでなかなかの風情である。
この木は毎年多く実をつけるが、なぜか実によって甘かったり渋かったりで、近所の子らを惑わせて喜んでいる。
私も時々、子らに交ざり実を採る。この柿の木は誰の所有でもないから怒られはしない。
そして甘いものはそのまま、渋いものは干し柿にする。干し柿ができると痛い目に合った小僧にやる。
甘い渋いを見立て間違うことはない。
部屋の障子越しに見ると、渋い実は影のように黒く、甘い実は朱く見えるのである。
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