懸恋-keren-
超短編
2004年5月18日火曜日
夕焼け小焼け
夕焼けのお空が食べたい、と言うと祖父は古びたカメラを空に向けた。
「明日のおやつまでの辛抱だ。できるかい?」
と祖父は笑い、ネガを載せたガラスの器は冷凍庫にしまわれた。
茜色したアイスキャンデーの味はとうに忘れた。
あのときの祖父のカメラはいくら探しても出てこない。
おいしそうな夕焼け空を最後に見たのは、いつのことだったろう。
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突発性企画「こおる」参加作品
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