雪の上に、見慣れない足跡がある。いや、本当に足跡なのかどうかはわからない。しかし、ひとまず足跡と呼ぶのが適切な気がする。
「ペ」と読める。カタカナか、ひらがなかは、わからない。
それは等間隔で続いている。追いかけようかと思ったが、隣家の畑の上を歩くことになるのでやめた。
夜道、後ろから聞き慣れない足音がする。「ぺたん」でも「ぺこ」でもなく、ただ「ペ」だ。
いつかの冬、雪の上に見た足跡の主だろうと思う。この音は「ひらがなだ」と、わかる。
振り返って姿を見てやろうと思ったが、途端、右へ曲がってしまった。隣家の畑の方角だ。矢張り、あの足跡の主だと確信する。
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500文字の心臓 第163回タイトル競作
〇5 △1 正選王