2014年2月4日火曜日

奇行師と飛行師17

「ここにいらっしゃるのが、蟻地獄男爵」と瘤姫が地面を指した。
湿った森の一部に乾いた土、サラサラとすり鉢状の穴、中からひょっこりと髭を生やした人が顔を出し、ウィンクしている。
「瘤姫、久しぶりですな」
一行は、蟻地獄男爵のウィンクに心が踊った。
「なんと、奇人のキャラバン隊。このじいさんも入れてくれるのか?!」
蟻地獄男爵は、一人ひとりと手を取り、握手し、そしてウィンクをした。
奇行師がお礼に赤いハイヒールを頭に乗せて逆立ちをしてみせると、蟻地獄男爵は笑い転げ、自分の掘った蟻地獄に滑り落ちそうになったので、飛行師が慌てて救助した。
「時に、男爵。我々は実は人を探しているのです」
と、奇行師は言った。
「奇人集めをしているとは思っていたけれど、探している人がいるなんて聞いてないよ」と蝸牛男は思ったが、黙っていることにした。