超短編
触れ合う度に、夫婦は少しづつ傷つけ合い、傷は瘡蓋となる。
傷付け合っていることもそこに瘡蓋ができることも二人は知らないが、剥がれ落ちた瘡蓋は、例えば押入れの隅に、例えば水洗便所のタンクに、ポロリと落ちる。
夫が無意識に股間を掻いた時には、家のどこかで夫婦瘡が剥がれた証だ。
夫婦の仲は悪くない。いや、むしろ良好だといえよう。それでも、だからこそ、夫婦瘡は増えていく。