2013年4月26日金曜日
エジプト土産
パピルスの巻物が届いた。
中には「エジプト土産です」と母の字で書いてある。一体いつエジプトに行ってきたのだろう、そんな話は聞いていない。
電話して尋ねてみると「エジプトって、あの、テトラポットの?」と、頓珍漢なことを言っている。ピラミッドも言えない人がパピルスを知っているほうが可怪しい。
じゃあ、このパピルスは誰が送りつけたものだろうか。気色悪く思いながら開くと、中には日本語で、「笠地蔵」の話が書いてあるのだった。
娘に読んで聞かせると、大変に喜んだ。次の晩は「舌切雀」になっていて、これも喜んで聞いていた。エジプト土産には謎が多い。
中には「エジプト土産です」と母の字で書いてある。一体いつエジプトに行ってきたのだろう、そんな話は聞いていない。
電話して尋ねてみると「エジプトって、あの、テトラポットの?」と、頓珍漢なことを言っている。ピラミッドも言えない人がパピルスを知っているほうが可怪しい。
じゃあ、このパピルスは誰が送りつけたものだろうか。気色悪く思いながら開くと、中には日本語で、「笠地蔵」の話が書いてあるのだった。
娘に読んで聞かせると、大変に喜んだ。次の晩は「舌切雀」になっていて、これも喜んで聞いていた。エジプト土産には謎が多い。
2013年4月22日月曜日
2013年4月20日土曜日
落ちている赤ん坊を拾う話
自分が拾われた子供だと知ったのは、18歳の時だった。
高校を卒業して、家を出ることにしたとき、「そうそう」と親父は話し始めた。
「うちは、ステゴの家系なのだ」
親父は自慢そうに言った。「ステゴ」が「捨て子」であることに気づくまで、少し間が掛かった。
「俺も、おまえのじいさんも、ひいじいさんも、もちろんおまえも、捨て子だ。先祖代々由緒正しき捨て子の家系である」
自分が捨て子であることは、さほどショックではなかったが、自分の先祖が皆捨て子であることには流石に驚いた。
「おそらく」
親父は険しい顔をした。「おまえもそのうちに赤ん坊を拾うことになる」
そうして、拾い子に関する役所的な手続きやら、育て方やら、今オレにしているように捨て子の家系であることを明かす時期について、親父は親父らしからぬ丁寧さで講義をしたのだった。
道端に赤ん坊が落ちていることなんて、そう滅多にないだろうとタカをくくっていたけれど、「家系」といわれてしまうと気にはなる。
そして今朝、出勤しようと玄関の扉を開けた所に、赤ん坊が落ちていたいたのだ。
「やあ、息子……いらっしゃい」と、おれは呟いた。
高校を卒業して、家を出ることにしたとき、「そうそう」と親父は話し始めた。
「うちは、ステゴの家系なのだ」
親父は自慢そうに言った。「ステゴ」が「捨て子」であることに気づくまで、少し間が掛かった。
「俺も、おまえのじいさんも、ひいじいさんも、もちろんおまえも、捨て子だ。先祖代々由緒正しき捨て子の家系である」
自分が捨て子であることは、さほどショックではなかったが、自分の先祖が皆捨て子であることには流石に驚いた。
「おそらく」
親父は険しい顔をした。「おまえもそのうちに赤ん坊を拾うことになる」
そうして、拾い子に関する役所的な手続きやら、育て方やら、今オレにしているように捨て子の家系であることを明かす時期について、親父は親父らしからぬ丁寧さで講義をしたのだった。
道端に赤ん坊が落ちていることなんて、そう滅多にないだろうとタカをくくっていたけれど、「家系」といわれてしまうと気にはなる。
そして今朝、出勤しようと玄関の扉を開けた所に、赤ん坊が落ちていたいたのだ。
「やあ、息子……いらっしゃい」と、おれは呟いた。
2013年4月14日日曜日
2013年4月9日火曜日
2013年4月6日土曜日
2013年4月3日水曜日
特等席
窓際の席に一つ、いつもカフェオレが置いてある。誰もその席には座らない。
その店の常連になるにつれて、窓際のカフェオレは見慣れた景色になってしまったけれど、その代わり気がついたこともあった。
カフェオレが少しずつ、少しずつ、減っていくこと。
透明人間がいるのかしら。それとも、幽霊……?
そんな話をこの店で顔見知りになった直子さんにした。直子さんはいつも窓際のカフェオレの左隣の席でコーヒーを飲んでいる。
私の祖母くらいの年格好だけれど、気さくな人で、話はよく合う。
「幽霊といえば、幽霊よねえ、あなたは」
ふふふ、と直子さんがいたずらっぽく笑って、カフェオレの前に自分の老眼鏡をかざした。
眼鏡の向こうで、小さなおじいさんが「やあ!」と手を振った。
マグカップの縁に腰掛けて、小さなマグカップでカフェオレを掬って飲んでいるのだった。
「ここは、私の連れ合いの特等席だったのよ。相変わらずカフェオレばっかり飲んでるの、困ったおじいさんよね」
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