2012年7月6日金曜日

ドミノの時代

 私がかつてドミノに夢中になっていた頃の話だ。
 寝食を忘れてドミノを並べていた私は、息をするのも歩くのも、すべてがドミノのためであった。
 ついにドミノを並べ終えたとき、うっかりため息を吐きそうになり、慌てて飲み込んだものだ。
 ドミノを倒す時が来た。それは予め日時が決められていた。
 私は、震える人差し指でちょん、とスタートのドミノに触れた。
 パタパタパタパタパタと、ドミノが音を立てて倒れていく。
 目覚まし時計が大声で喚きだした。時計もまた、長く沈黙を続けていたのだ。