懸恋-keren-
超短編
2012年7月19日木曜日
とまどいもしない
「貴方、誰……でしたっけ?」
と、訊かれるのは毎日のこと。
父や母や、同級生や、駅員さんや、コンビニのお兄さんや、その他大勢のすれ違う人々に、揃いもそろってとうもろこしの欠片が歯にひっかっかったような顔で尋ねられるのだ。
「私は……誰でしたっけ?」
と、やり過ごすのも上手くなったつもりだけれど、このごろ本当に誰だかわからなくって、時々雲を抱いて泣くのだ。
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