懸恋-keren-
超短編
2012年1月27日金曜日
夢の女王
女王の吐き出す吐息が夜空いっぱいに広がる。吐息は千切れ、丸まって、不思議な生き物になった。
小さな幻獣たちは、きょろきょろと地上を見回して、誰かのベッドを目指して降りていく。
「女王さまは夜のあいだずっと息を吐き続けて苦しくないのかしら?」
一匹の幻獣が心配すると、女王はニッコリと微笑み、それから大きな大きな幻獣を出してみせた。
大きな幻獣はぽやんぽやんと夜空をスキップした後に、最後の夢を見る老人目掛けて降りていった。
江崎五恵さんの個展「夢のタペストリィ」を見て。
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