海狸の建築技術が、世間に認められるようになって、海狸は他人の家まで建てるようになった。
海狸の建てる家は、良い香りがすると評判である。海狸の家に棲む夫婦は、仲が良い。
よい香りのする家は、いつもよいムードが漂うらしい。
子供の多い夫婦が増え、「夫婦円満の家」「子宝の家」として売り出されるようになった。
しかし、当の海狸は他人の家を建てるのに忙しくて、子供が少なくなった。
なんだか変だと思いながら、今日も海狸はカストリウム香る家を建てる。
2012年1月28日土曜日
2012年1月27日金曜日
2012年1月21日土曜日
鳥の本能
渡鳥が間違いなく目的地に辿り着くには、星や風との情報交換が欠かせない。
生憎、雲とは情報交換ができないのだが、鳥に雲と会話する能力がないためなのか、雲が無口だからなのかは、まだわかっていない。
生憎、雲とは情報交換ができないのだが、鳥に雲と会話する能力がないためなのか、雲が無口だからなのかは、まだわかっていない。
2012年1月19日木曜日
2012年1月17日火曜日
2012年1月10日火曜日
2012年1月8日日曜日
猿の言葉
山から降りて町で暮らしたその猿は、一部の人間により町を追放されることになった。
猿が唯一覚えた人語は、「猿が去る」というものだったので、申年の年末までは町に居住することを許された。
次の申年まで覚えていられるだろうか、と不安に思った猿だが、それをうまく表明できないまま町を去った。
猿が唯一覚えた人語は、「猿が去る」というものだったので、申年の年末までは町に居住することを許された。
次の申年まで覚えていられるだろうか、と不安に思った猿だが、それをうまく表明できないまま町を去った。
2012年1月3日火曜日
動物の帰郷本能
飼い主がほろっと手を緩めてしまったときに、犬は芳しい香りを嗅ぎつけて、無条件に走りだしてしまったのだ。
その香りの源は、巨大な花だった。犬はすぐに興味を失った。そういえば腹が減っている。
こんなに長距離を全力で走ったのは、生まれて初めてだ。
さて、ずいぶん遠くに来てしまったぞ、と犬は気づいたがどうしようもない。
幸い犬は飼い主の名を覚えていたので、訊いて回りながら帰ることにした。
「ヤマノウエ・ノボルの家を知りませんか」
と犬が訊く。
「おまえ、帰郷本能もないのか? 犬なのに。俺はどこにいても帰れるぜ」
と、ほとんどの犬が答える。
犬は犬としての己の能力のなさを知り、自信を失った。
そうこうしながら彷徨い歩いた。野犬として追い掛け回されたり、保健所に送られそうになりながら、一軒の家に迷い込んだ。
犬は、その家の人間にひどく歓迎された。そして、涙ながらに庭に通されたのだった。
庭では、犬の母が、息を引き取ろうとしている。
その香りの源は、巨大な花だった。犬はすぐに興味を失った。そういえば腹が減っている。
こんなに長距離を全力で走ったのは、生まれて初めてだ。
さて、ずいぶん遠くに来てしまったぞ、と犬は気づいたがどうしようもない。
幸い犬は飼い主の名を覚えていたので、訊いて回りながら帰ることにした。
「ヤマノウエ・ノボルの家を知りませんか」
と犬が訊く。
「おまえ、帰郷本能もないのか? 犬なのに。俺はどこにいても帰れるぜ」
と、ほとんどの犬が答える。
犬は犬としての己の能力のなさを知り、自信を失った。
そうこうしながら彷徨い歩いた。野犬として追い掛け回されたり、保健所に送られそうになりながら、一軒の家に迷い込んだ。
犬は、その家の人間にひどく歓迎された。そして、涙ながらに庭に通されたのだった。
庭では、犬の母が、息を引き取ろうとしている。
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