「しっぽを切られたのもずいぶん前の話だ」
黒猫はひとりごち、傍らのキナリを見上げた。キナリはもう少女ではない。
「もうオジサンね、ヌバタマも」
そう、十年前のこの季節、この公園で月と少女に見つかったのだ。
しっぽを切られ、人語を操った。
しばしの時を経て、しっぽは戻り、黒猫は人語を話さなくなったが、それでもやはり月とキナリの傍にいる。
「黒猫もヒゲが白髪になったりするの?」
と、いたずらっぽく笑うキナリは、相変わらずだ。
月はブランコで寝ている。この間の月蝕で、疲れたらしい。
あの夜は、黒猫のエメラルド色の瞳が、一瞬だけルビー色になった。
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「瓢箪漂流」は2001年12月12日に開設し、本日十周年を迎えました。
月食の夜は、流れ星をひとつ見ました。