アムラとカムラの母は狼である。二人は、狼の乳で育てられたのだ。
狼語と人語を操るアムラとカムラは、母の言葉を人語に訳した。
「私は最後の狼である」
人々は驚いた。
「もう仲間はひとりもいないのですか」
町長さんの言葉をカムラが訳して母に訊ねた。
「はい。私はほうぼう探しました。でも、狼と出会うことはできませんでした」
アムラは、泣きながら通訳した。
「けれど、さびしくはありません」
カムラは、きっぱりと通訳した。
そして二人と母は、月に向かって、吠えた。
その咆哮は、世界中で聞くことができたという。