2010年4月25日日曜日

最後の楽団

街で一番の高層ビルでのコンサート。この拍手が消えたら、楽団は解散する。

火山灰に埋もれた街に、弦楽器は生きづらい。まして管楽器なんて。
ヴァイオリニストは演奏中しばしば弓に付いた灰を拭った。
楽団の解散を報せるファンファーレを鳴らすために、トランペッターは三回も楽器を分解して灰を洗い流さなければならなかった。
観客はそれを見て、楽団の解散が避けようのない現実だと悟る。

洗浄を終えたトランペットがファンファーレを射つ。観客はファンファーレの圧力を身体いっぱいに感じ、これが最後の音楽なのだと涙する。