懸恋-keren-
超短編
2010年4月12日月曜日
老いた月
月は皺だらけの顔をしかめながら、夜の都会を眺める。
湾に映る顔が揺れるのは、波のせいだけではない。
建設中のタワーはどんどんと高くなり、完成すれば月の鼻先を掠めることは確実となった。
ビルの明かりは、年々冷たいものになっていく。
もう自力で毎夜空に昇るのは大変になっている。
そろそろ、ゼンマイ式に変えてもらわなくてはならないだろう。
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