懸恋-keren-
超短編
2010年4月15日木曜日
古城に棲む人
男は姿を失った。透明人間になったのである。
それに伴い男の妻は、耳と鼻が著しく発達した。夫の姿や行動を捉えるべく、足音や衣擦れ、体臭の変化を逃さぬようにした結果だった。
姿の見えない夫に、犬のような耳と鼻を持った妻、夫妻が世間から疎まれるのに時間は掛からない。
二人は、人里離れた古い城に移り住み、毎夜ダンスを踊っている。
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