懸恋-keren-
超短編
2008年11月23日日曜日
遠くからの星
マイナス二度の中、マフラーだけ巻いてパジャマのままベランダに出る。
眩しい。夜が申し訳程度に星と星の隙間を埋めている。
ぼくはすぐにきみを見つけた。きみは目立つわけでもなんでもなくて、砂を撒いたような無数の星屑のうちの一粒で、今夜みたいな晴れた寒い夜にしか逢えない。
明日は逢えないよ、ときみが言う。何故かと訊ねると、出張だからときみは答えた。
それじゃあ明日の夜もぼくはベランダに出るよ。きみがいないことを確かめるために。
そう言ったら、きみはなぜか赤く光った。
明日も晴れるといいなぁ。
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