懸恋-keren-
超短編
2008年11月8日土曜日
ふ #ddb277
古い風呂敷に封印された笛は、不思議な笛だ。
フランスで双子の船乗りが吹いていたが、不慮の踏切事故で笛は汽車に踏み潰された。
再び双子の船乗りの手に戻ったが、笛は複雑な不満を訴えて、冬にしか吹けなくなった。冬の笛の音は不気味で不愉快だった。
双子は笛を風呂に入れ、ふやかして拭いた。それからふんわりと風呂敷に包み、封じることにしたのだ。
以来、笛は風呂敷の中でふにゃふにゃの腑抜けになっている。
ふ
#ddb277
次の投稿
前の投稿
ホーム