超短編
祖父の遺した古いノートは航海日誌だということがやっとわかった。船の揺れのせいか、ただでさえ癖の強い文字はひどく乱れ、気象用語と思しき単語が踊っている。祖父が船乗りだったとは俄には信じ難い。僕は一度も海を見たことがない。3.4%の塩水を作ってみたが、塩水の味か涙の味か、よくわからない。