ある朝、目覚めると白い服の男がいた。
シャワーを浴びて、伸びすぎた触覚を剃り、コーヒーを飲むのを、じっと見ていた。
朝の身支度が一通り終わると、白い服の男に背を向けて、シャツを脱いだ。
いつかはこうなるとわかっていたのだ。いや、こうなることを望んだのは自分だ。
白い服の男は、消えず見えずインクでスタンプを背中に押した。
乱暴にされるかと思ったが、とても慎重な動きだった。
くすぐったくて一瞬、身体が動く。左腕の内側にも同じスタンプ。やはり、くすぐったいのだった。
顔写真を撮られ、サインをした。
所持品をまとめようと思ったが、まとめるほどの所持品はなかった。
ともかく、旅に出るのだ。ここにはもう、居られない。