懸恋-keren-
超短編
2015年10月27日火曜日
旅立つ姫君
「さあ、行ってらっしゃい」
父なるかぼちゃ氏に見送られ、かぼちゃの姫君は旅に出た。キノコたちが、嬉しそうに道を作る。
「急いだほうがいい」と、姫君を乗せた栗鼠は疾走する。落ちてくる枯葉を巧みに避けて駆ける。
「どうして急ぐの? 冬の始まりに間に合わせるため?」
「今宵は満月だから。月が出る前に」
満月の月明かりは眩しいものね、と姫君は応じたけれど、栗鼠は答えない。
イラストレーション:へいじ
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