2014年8月30日土曜日

朝霧 (お題:霧)

目覚めると、寝室は濃い霧で満ちていた。
確かに目覚めたはずなのに、まだ夢の中にいるのかと、激しく混乱する。
視界が悪くて、手元に手繰り寄せた目覚まし時計の針もよく見えない。本当に朝なのか。
体のあちこちを触り、乱れた布団を探る。湿気を吸って重たい。
窓のほうへ這って行き、よろよろと立ち上がり、カーテンを開ける。
カーテンも重く、心なしか開きが悪い。
窓の外は、快晴だった。
眩しい。
思い切って窓を開けると、霧が一斉に音を立てて外気に吸い取られていった。

 

 


2014年8月23日土曜日

八月二十三日 海藻サラダ

風呂場のスノコにたくさんの海藻が生えている。


ワカメ、コンブ、其他たくさん。


不気味に思ったが、父が「これは美味い」と言っている。もう食べたのか。


そういうわけで、親戚一同集まっての、海藻サラダパーティーと相成った。


マヨネーズ醤油で食べると美味しい。


 



2014年8月21日木曜日

八月二十一日 ポット

ポットの湯を飲もうと湯のみに注いで飲んだら、昆布茶だった。


とても美味しかったので、そのまま三杯飲んでから「今度は紅茶が飲みたい」と言ったら、ポットからただの湯が出てきた。


贅沢を言い過ぎたようだ。



2014年8月13日水曜日

八月十三日 夕方のクリーニング店

迫り来る闇の中に駆け込んだクリーニング店。


店員は引き換えの紙切れを片手に、おびただしい数の衣類を掻き分けている。


いつまで経っても私のワンピースは出てこない。


店員はズボンを取り、紙切れをにらめっこをし、ズボンを戻す。


店員はコートを取り、紙切れとにらめっこをし、コートを戻す。


私は不安になり、「ワンピースです」と小声で言う。


すると一斉にワンピースがドサドサと床に落ちた。


店員は「黙っていてください……」と申し訳無さそうに、だがキッパリと言う。


私のワンピースは、あらゆるワンピースの下敷きとなっていた。


息を切らせてワンピースを掘り出した店員の顔は、夕闇と同化して目鼻が見えない。



2014年8月9日土曜日

八月九日 エンドレスラーメン

ラーメン屋の外は宇宙空間だった。


満腹の客はゲップも出来ずに宇宙をさまよい、程良い所でロボットアームに捕獲され、そして再びラーメン屋。



2014年8月8日金曜日

八月八日 宅配便

今日は荷物がよく届く日だ。


ビールと米とハガキ。それからこちらから本を送った。


アイスティーを飲んで一息ついたら、また宅配便が届いた。


 


よく酒が染み込んだケーキ。


甘くて、少し酔っ払った。



2014年8月2日土曜日

八月二日夏祭り

踊り踊るなら、提灯の数を数えるのはやめておいたほうがいい。


と、アイスキャンディーを食べながら、甚兵衛姿の少年が囁いた。


「え?」と振り返ったら、水鉄砲の攻撃を受ける。


顔が濡れたまま、踊りの和に入った。数えない、数えないと思っているのに、いつのまにか、踊りながら提灯の数を数えている。


「丸丸商店街」の文字が網膜に焼きつく。「1、2、3、4、5……」


何の唄が流れても、炭坑節を踊ってしまう。