渋みが澱のように舌に溜まっていく。
なにも味がわからない。滑舌まで悪くなる。
舌が痺れる。
するとやかましい太鼓の音とともに鳥の羽根を頭に載せた裸の女が現れた。
異国の踊りに誘う。誘われても困る。
鳥の羽根が顔を撫でる。くすぐったくて不快だ。
裸の女はウインクして去っていく。
舌は痺れは収まった。
渋みが澱のように舌に溜まっていく。
なにも味がわからない。滑舌まで悪くなる。
舌が痺れる。
するとやかましい太鼓の音とともに鳥の羽根を頭に載せた裸の女が現れた。
異国の踊りに誘う。誘われても困る。
鳥の羽根が顔を撫でる。くすぐったくて不快だ。
裸の女はウインクして去っていく。
舌は痺れは収まった。
時間前に待ち合わせ場所に着いたら、相手はまだいない。
入り口のそばのベンチに座り、外を眺めていたが、なかなか現れない。
二十分ほど経って、電話が鳴った。
「どこにいる?」
「ここにいるよ」
目の前の空気が揺らぎ、陽炎のようだった揺らぎがだんだんとくっきりとして、ついに相手が姿を現した。
「ずっとここにいたのに」
「もっと早く電話すればよかったね」
笑いあった。
「知らない獣の匂い」
こんなときだけ、ウサギは鋭い。今日買ってきた筆は馬の毛だ。
ウサギをからかって遊んでいたら、筆とウサギの尻尾が絡まってしまった。
「どうしたら取れる?」と聞くと、ウサギは盛大に放屁した。
スルリと筆が取れた。
サーモンピンク色にはおいしいのとおいしくないのがある。
ウサギはそれを瞬時に判別する。「匂いでも嗅ぐの?」と尋ねると、「耳でわかる」という。
サーモンピンクのTシャツ、サーモンピンクのストール、サーモンピンクの枕カバー、耳でちょんちょんと触っては「おいしくない」という。
本当においしいサーモンピンクは、そう簡単には見つからないのだ。
休日の賑やかな家電店、店員の呼び声はいささかやかましい。
やかましい? ちょっと違う、けたたましいと言ったほうがいい。
すべての呼び声は人の声ではない。ずいぶん性能がよいが、電子音だ。
家電店は電気宣伝鳥の巣になってしまったようだ。
冷蔵庫も電子レンジも諦めて、外に出た。お腹が痛くならないうちに。
『アド・バード』椎名誠 が好きです。