懸恋-keren-
超短編
2013年9月23日月曜日
彫刻家(お題:冷たい)
氷の世界に住む彫刻家の手は、白く冷たい。
私はその手を温めたいといつも願っているけれど、「氷が解けてしまうから」とほんの一瞬握手するだけ。
彫刻家の作った彫刻は、氷の世界の地下深くで眠っていて、私は一度も見たことがない。
「誰のための彫刻なの?」と尋ねるけれど、神様のそのまた神様の話から聞かなくてはならないから、いつも途中で眠ってしまう。
目覚めると、彫刻家はもういなくなっていて、私は氷の涙を流すのだ。
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