超短編
少女は、獣に供された生贄だった。だが、獣は少女を飲み込みことはせず、その広い口腔内に住まわせた。少女を咥えた獣は、ゆっくりと旅した。死に場所を探す旅だ。温かく穏やかだった獣の口腔内は、次第に不快な粘度を増していった。やがて、唾液さえ出なくなり、獣の旅は終わった。
干からびゆく獣の舌の上に、少女は身体を預けた。獣が化石となった今でも、細く静かな寝息を立て、ずっと同じ夢を見ている。
江崎五恵さんの「供物」を見て。IFAA幻想芸術展にて。