ボコっと音がして、町が外れた。
外れた町は、漂流でもするのかと思ったけれど、町の人々がボルトとナットでギリギリと連結している。
「まーまー、久しぶりに外れちゃったのね」
と、おばあさんが笑っている。
2012年5月26日土曜日
外れた町
2012年5月22日火曜日
2012年5月16日水曜日
2012年5月14日月曜日
へんくつ窟
へんくつ窟は、洞窟のくせに扉があって「ごめんください」と入らなければならない。
へんくつ窟の壁は、モザイクタイルで埋め尽くされている。
へんくつ窟には、巨大蝙蝠が暮らしていて、訪れる時には手土産がなければならない。
へんくつ窟の巨大蝙蝠への手土産は、よく熟れたパパイヤを38個でなければならない。
へんくつ窟から出るときには、次の訪問日時を正確に約束しなければならない。
へんくつ窟の巨大蝙蝠は「もう来なくていい」と必ず言うが、その言葉を信じてはいけない。
2012年5月9日水曜日
蠍踊り
昔々、あるところに老夫婦がいた。
夫婦には子供がいなかったが、蠍を飼っていた。
老夫婦は、蠍に「人を絶対に刺してはいけないよ」とよくよく言って聞かせていた。
蠍は大変に聞き分けがよく、人を刺すような素振りは見せなかった。
だが、強力な毒があるからと言って、蠍は村人から忌み嫌われ、老夫婦も村で孤立してしまった。
ある日、蠍は村人たちにひどく難癖を付けられた。蠍はやり過ごそうとしたが、多くの人に囲まれてしまった。
ジリジリと追い詰められ、逃げ場のなくなった蠍は、身動きした弾みで、一人の足にブスリ。
その毒針を刺してしまった。
確かに、蠍の毒は強力だった。だが刺された当人は痛がるでも苦しむでもなく、楽しそうに笑い、踊り始めた。
あんまり愉快に踊るので、村人全員が踊りだした。蠍は幸せだった。いつまでも踊りが止むことはなかった。
その村では、今も「蠍踊りの村」として知られている。
2012年5月6日日曜日
告白
堕天使の罪を一晩中聞き続ける夢を見た。
堕天使の翼が白くなってゆくにしたがって私の髪も白くなっていくのだった。
もうこれ以上聞いていては虹彩まで白くなってしまう、というところで目が覚めた。
鴉がこちらを見ている。
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