「ちょいとそこの人」
と、小鳥に声を掛けられた。婀娜な姐さんのような喋り方をする。
「どうしたんだい、小鳥さん」
「ちょっとそこまで運んで欲しいのサ」
小鳥のいう「そこまで」がどこまでかはわからなかったけれど、いいよと返事をした。
小鳥は、「猫が来なくて、きれいなお水が飲めて、ふかふかで桃色のクッションがあるところ」に行きたいのだという。
「つまり、小鳥さん、きみは、猫が来て、汚いお水しかない、ゆっくり眠れないところで暮らしていたんだね」
小鳥の希望を叶えるべく、僕は街中を歩きまわった。
簡単なようでいて、なかなか難しい。この町の人は、小鳥を飼ったことなどないのだ。
諦めて、小鳥を肩に載せたまま部屋に帰った。
「あら、ステキじゃないの」
そういえば、僕の部屋には小さな桃色のクッションがあったのだ。
どうして早く気がつかなかったんだろう?