超短編
庭に埋められ空襲を逃れたという重箱に、おせちを詰めていく。かれこれ百年経つ筈だが、欠けも剥げもなく見事に四角い。だが今年、同じ寸法で一段だけ誂えた。やはり与の段で菜箸が止まる。盛り付けようとすると煮しめの人参が、蓮根が、弾かれ宙を舞う。飛翔人参は華麗に新重箱に着地した。拍手喝采。(140字)