超短編
父の描いた水墨画は天気が変わる。雨の日、風の日、雪の降る日。私は父の絵が大好きだ。「よっこらせ」父がうれしそうに苺を買ってきた。「これは重くなるぞと思ったら、帰り道からどんどん重たくなった」と自慢する。ずっしりと重く、甘酸っぱい香りがする。父はこの重い苺を文鎮にして水墨画を描く。