超短編
電車通学を始めた15歳、最寄駅にはまだ改札に駅員がいた。パスケースを見せる仕草に慣れた頃、自動改札となり三十年。先日、どことなく所在無げな駅員に「定期を拝見」と言われ面食らった。タッチしたばかりのスマホで交通系ICの画面を差し出すと、駅員は古めかしい眼鏡の奥で目を見開いて覗き込んだ。