電話ボックスの扉を開けたのは、まさに立派な身形の人だった。
促されて受話器を渡す。
「この若い旅の者と赤い鳥の監視を只今より開始します」
立派な身形の人と暮らす家は、前に住んでいたところと目と鼻の先だった。すでに部屋は設えられ、立派な身形の人の住まいに相応しい家具や調度品が揃えられていた。
「年寄との暮らしは煩わしいだろうけれど、辛抱してください」
赤い鳥は、ただの赤い鳥になったが、立派な鳥籠を用意してもらって喜んでいる。
食事は交代で作ることになった。旅の影響だろう、ところどころ五感がおかしいのは戻ってすぐから気が付いてはいたが、料理はその確認には最適だった。
この感覚の変化は研究の対象にもなるということで五日に一度、ラボに通うことになった。ラボもまた、目と鼻の先にある。いや、真新しいラボだから「出来た」というほうが正確だ。どうしても移動をさせたくないらしい。
罪を犯して旅をすることになったとはいえ、いまやそれが罪というのは奇妙なことである。ただ貴重な経験をしたに違いないことは確かだ。
立派な身形の人と毎晩のように語り合っている。
通信に続いて移動が罪となった。次は何が罪になるというのか……。