青い鳥が電話機本体に飛び移る。目を合わせる。鳥は喋らない。
「消えず見えずインクの旅券を持つ旅の者よ、聞こえているな」
受話器から聞こえるこの声は?
「消えず見えずインクの旅券を持つ旅の者よ、受話器を消えず見えずインクに当てよ」
シャツを捲り上げ、消えず見えずインクのあたりに受話器を押し当てる。
「痛!」
一瞬だが強烈な痛みだった。何が起こっているのかよくわからないが、旅が終わる。終わらされることを確信し始める。
「消えず見えずインクの旅券を持つ旅の者よ、受話器を消えず見えずインクに当てよ」
次は腕にも当てろということらしい。もう一度痛みに耐えるための深呼吸をしてから受話器を腕に当てた。
「っく!」
ジュッと焼けるような音と匂いがした。匂い?