どこか、暖かいところで、温かい食べ物を食べたかった。
このままでは病気になってしまうという危機感があった。
「鳥よ、温かい物が食べたい」
だが、赤い鳥は何も答えない。
赤い鳥は自分の意志は言うが、まともな会話が成立するわけではないと気が付くには、少し時間が掛かった。ちゃんと、通りの人々に聞こえるように質問しなければ。
「え~」
と言うやいなや、赤い鳥は叫んだ。
「こちらに御座します、消えず見えずインクの旅券を持つ旅のお方は、温かい食べ物を欲しておられる!」
この大仰な言い回しが赤い鳥独特なものなのか、人々にはどのように聞こえているのか、わからないことばかりだ。
だが、鳥の一声を聞いて、夫婦らしき二人組がこちらに向かってきた。顔貌が違っても、彼らが笑顔であることは、わかった。
2018年12月9日日曜日
鳥の役割
赤い鳥は、肩にとまった。そのまま付いてくる気のようだった。
どうやら、通訳をしてくれるらしい。追い返す理由はない。
育った街は捨てたに等しい。消えず見えずインクが消えない限り、あの街には戻れない。
この街も、望んで来たわけではない。だが、せっかくだから、少し探索してみようと思う。通訳もいることだから。
人々の視線を感じながら歩き、振り返ってあの鳥籠を見た。鳥も鳥籠も真っ赤だと思っていたが、今にも朽ち果てそうな青銅色だった。
改めて周りを仰ぎ見ると、建物の色も、道も、銅が朽ちかけたような青緑だった。
見慣れない姿の人々の服装も同じ色で、肌も青白い。それに気が付いた途端。ひどく寒気が襲ってきた。
肩の赤い鳥を胸に強く抱いた。
「旅のお方よ、少し力を緩めてはくれぬか?」
赤い鳥の甲高い声が、青銅色の街に響く。
どうやら、通訳をしてくれるらしい。追い返す理由はない。
育った街は捨てたに等しい。消えず見えずインクが消えない限り、あの街には戻れない。
この街も、望んで来たわけではない。だが、せっかくだから、少し探索してみようと思う。通訳もいることだから。
人々の視線を感じながら歩き、振り返ってあの鳥籠を見た。鳥も鳥籠も真っ赤だと思っていたが、今にも朽ち果てそうな青銅色だった。
改めて周りを仰ぎ見ると、建物の色も、道も、銅が朽ちかけたような青緑だった。
見慣れない姿の人々の服装も同じ色で、肌も青白い。それに気が付いた途端。ひどく寒気が襲ってきた。
肩の赤い鳥を胸に強く抱いた。
「旅のお方よ、少し力を緩めてはくれぬか?」
赤い鳥の甲高い声が、青銅色の街に響く。
2018年12月6日木曜日
簡潔な説明
鳥籠から出るかどうか、ずいぶん迷った。
人々の顔貌も、恰好も、見たことがないものだった。異国風というのとは、ちょっと違うように思う。
人間だけではなく、鳥や犬や猫と思しき生物も、見たことがない姿形なのだった。何故、鳥や犬や猫だとわかるのか、不思議である。
このまま、この真っ赤な鳥らしき生物と一緒に鳥籠に居たほうが、幾らか安全なのではないかと思ったが、向こうもこちらが珍しいようで、鳥籠の周りを囲まれてしまった。
人だけでなく、犬や猫も集まってしまった。
とてもこちらの言語が通じる人々だとは思えなかったが、何か言わなくてはと考えて
「え~」
と、声を出すと
「こちらに御座しますのは、消えず見えずインクの旅券を持つ、旅のお方である!」
と、赤い鳥らしき生物が、甲高い声で口上を述べた。
鳥籠の扉が重々しく開き始めた。
人々の顔貌も、恰好も、見たことがないものだった。異国風というのとは、ちょっと違うように思う。
人間だけではなく、鳥や犬や猫と思しき生物も、見たことがない姿形なのだった。何故、鳥や犬や猫だとわかるのか、不思議である。
このまま、この真っ赤な鳥らしき生物と一緒に鳥籠に居たほうが、幾らか安全なのではないかと思ったが、向こうもこちらが珍しいようで、鳥籠の周りを囲まれてしまった。
人だけでなく、犬や猫も集まってしまった。
とてもこちらの言語が通じる人々だとは思えなかったが、何か言わなくてはと考えて
「え~」
と、声を出すと
「こちらに御座しますのは、消えず見えずインクの旅券を持つ、旅のお方である!」
と、赤い鳥らしき生物が、甲高い声で口上を述べた。
鳥籠の扉が重々しく開き始めた。
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