世界が生まれたとき、まず豆本があった。
微細で微小な生物がその上を歩き、それが後に「文字」と呼ばれるものとなった。「文字」を解読できる生物が現れるまでは、長い時が掛かった。
その生物は文字は解読できたが、身体が巨大で、しかも不器用だったので、本の頁を捲ることができる生物が現れるまで、さらに長い時を待たねばならなかった。
頁を捲れる生物が現れ、初めて豆本の全頁が読まれた。
「埋めよ、育てよ」
豆本は、土に埋められ、ゆっくりと樹木になった。そして、ゆっくりゆっくりと成熟して、たわわに豆本を実らせた。ここに世界は完成した。