懸恋-keren-
超短編
2016年1月3日日曜日
くじらの東宮
くじらの東宮は、春を目指す。冬が生まれたその瞬間に、春を求めて旅を始める。白い息を吐きながら、心はもう春の気配が芽吹いている。一直線に春を目指す。長い旅になるが、航路に間違いはない。
だが、今年は少しだけ後ろ髪を引かれながらの出立だった。冬を見送る秋の視線が、なぜか忘れられない。
イラストレーション:へいじ
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