ヒールが鯨怪人に突き刺さる。「何をするんだ、奇行師。あ、奇行師、ひさしぶり」
鯨怪人は突き刺さったハイヒールを引き抜いて、奇行師に返した。
「おれも一緒に連れて行っておくれよう」
奇行師と蝸牛男が、歓迎の舞を背中で踊るので、飛行師はなんども墜落の危機を感じたが黙っていた。
「鯨怪人は、ヒトですか、クジラですか」と蝸牛男が聞いた。
「同じ質問をそっくりそのまま返すよ。あ、蝸牛男、はじめまして」
鯨怪人と蝸牛男はとても気が合ったようだ。
飛行師は、だんだんと本物の飛行機に近づいているような気がしてきていた。
変人を三人も背中に乗せて飛行しているのだから、もうただの飛行師ではない。
海上すれすれではあるけれども。