あんぐりと口を開けて、胡桃を咥えた老兵隊は、有無も言わずにサーベルを振り回しながら町を駆けまわる。
「見ろ、兵隊がおかしくなっちまった」
町の人々は指をさして嗤う。
町の人の八割五分の嗤いが止まらなくなったところで、王様自ら老兵隊が咥えた胡桃を取り上げることになった。
老兵隊の咥えた胡桃は、王様がどんなに引っ張っても取れなかった。
口を開けろ、口を閉じろ、歯を食いしばるな、歯を食いしばれ。舌を出せ、舌を出すな。
王様は様々なことを言いながら、胡桃を引っ張ったが、どうにも取れない。
老兵隊はまたサーベルを振り回し始め、王様は胡桃から手が離れなくなり、町の人の九割五分の嗤いが止まらなくなった。