その時計は地下道の壁にチューブで繋がれている。
ここを通る人間は少ないから、時計を見る人などほとんどいない。
しかし、時計が休むことは許されず、休みたくとも動いてしまうのが時計というものなので、時計は律儀に時を刻んでいる。
この時計は電力もゼンマイも必要とせず、しかしそのかわり、ミューズリーを食べないと動かない。
チューブの先は、ローズマリーさんの家に繋がっていて、毎朝決まった時間に、前夜からミルクに浸してあったミューズリーを大量に流し入れてもらう。
うっかりローズマリーさんが寝坊したときには、目覚ましのベルを鳴らして起こすのだ。
チューブから鳴り響くぼんやりとした目覚ましベルで、ローズマリーさんはノソノソと起きだし、不運にも地下道を歩いていた人はあまりの大音響に、数日間は頭痛が治まらない。